Knowledge基礎知識
債権の種類によって時効が違う?|債権回収における3つの禁止事項
お金を貸したにもかかわらず債務者がお金を返してくれないなどといった場合には、債権者は債務者からの債権回収を検討することになるでしょう。
しかし、債権回収には注意すべき点があり、そうした注意を怠ると債権回収が困難となることがあります。
そこで本稿では、債権の種類によって時効が違うのかなどを含めて、債権回収における3つの禁止事項について解説していきます。
債権回収における3つの禁止事項
債権回収においては、大きく分けて以下の3つの禁止事項があります。
・債権回収を長期間放置すること
・違法な債権回収手段をとること
・債務者の財産状況が悪化した後の債権回収
これらの禁止事項に違反した場合には、債権回収が困難となったり、かえって債権者が損害賠償請求をされたり、折角の債権回収が徒労に終わるなどの不利益を被る場合があります。
以下では、それぞれの禁止事項について詳しく解説していきます。
債権回収を長期間放置すること
債権回収をする場合、債権の有効期間、すなわち、債権の消滅時効に注意する必要があります。
債権の消滅時効期間が経過している場合、債権回収を実行しても債務者からその期間経過を主張される結果、債権回収が非常に困難あるいは不可能となります。
では、その消滅時効期間は債権の種類によって異なるのでしょうか。
結論としては、2020年(令和2年)4月1日以前の改正前民法の下で発生した債権については、消滅時効期間が異なる場合があります。
改正前の民法は、債権は権利を行使することができる時から十年間行使しない時に時効によって消滅することを原則としており、特定の債権について、特別に短い消滅時効期間を設定していました。
これは短期消滅時効期間と呼ばれていました。
たとえば、自動車の修理代や給料債権などは3年、売掛債権、授業料債権などは2年、旅館・料理店の宿泊・飲食代金などは1年といったように、個別の短期消滅時効期間が設定されていました。
これに対して、現行民法の下では、上述のような債権の種類によって時効期間が異なるということはありません。
具体的には、債権者が債権を「行使することができることを知った時から五年間」又は「行使することができる時から十年間」行使しないときに時効によって消滅します(民法166条1項)。
そのため、2020年4月1日以降に発生した債権については、現行法の消滅時効期間に服することになります。
ただし、不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効のみ「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間」又は「不法行為の時から20年間行使しないとき」と定めているため(民法724条)、注意が必要です。
以上のように、債権には消滅時効期間があるため、長期間放置すると債権回収が困難となる場合があるため、債権が成立した日等に注意する必要があります。
違法な債権回収手段をとること
債権回収を行う中で、債権者の回収行為が違法行為に該当してしまった場合には、債務者から損害賠償請求をされたり、最悪の場合には刑事罰を科されたりすることがあります。
そのため、債権回収手段が違法行為に該当するか否かについては、細心の注意を払う必要があります。
具体的には、債務者の情報収集段階と債権回収の実行段階に分けて注意すべき点があります。
まず、債務者の情報収集段階においては、債務者の自宅内を調査するために許可なくその敷地内に立ち入る行為や債務者の資産状況を調査するために債務者宛の郵便物を取り出して中身を見る行為などは、住居侵入罪等の刑法犯に問われる可能性があります。
次に、債権回収の実行段階においては、債務者の自宅や勤務先を高頻度で訪問したり、債務者以外の親族や職場関係者に連絡したりする行為は、民事上の不法行為責任等を問われる可能性があります。
また、債権回収を請け負うサービサーと呼ばれる業者に個人が債権回収を依頼することも原則として認められていないため、違法なサービサーに債権回収を依頼することもやめておいたほうが良いといえます。
債務者の財産状況が悪化した後の債権回収
債権回収を行う場合には、債務者の財産状況が悪化していないか、無資力となっていないかという点にも注意する必要があります。
適法に債権回収を行ったとしても、債務者が債務を弁済した当時、その資力が全くなかった場合や他の債務を継続的に弁済することができないような状態となっていた場合などには、事後的にその弁済の効果が否定され、受け取った金銭等を返還しなければならないという事態が生じる可能性があります。
具体的には、債務者が特定の債権者に弁済すると無資力となるという場合には、民法上の詐害行為取消権が主張され、債務者による弁済の効果が否定される場合があります。
また、債務者と債権者が通謀して弁済をしたような場合にも、同様に弁済の効果が否定されることがあります。
さらに、債務者が破産手続に入った場合、破産管財人より否認権の行使などを受け、回収した金員を返還させられるようなこともあり得ます。
まとめ
確実に債権回収を成功させるには、本稿で挙げた禁止事項に留意して債権回収を行うようにすることが重要です。
債権回収に関してお悩みの方は、ゴッディス法律事務所までお気軽にご相談ください。
当事務所はこのほかにも案件を多く取り扱っております。
お困りのことがございましたらお気軽にご相談ください!
9時~21時まで無料相談受付