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財産開示手続を無視された場合の対処法|必要書類についても解説
貸金請求や敷金返還請求、損害賠償請求等の訴訟で勝訴判決を得ても、相手方が任意に支払わない場合、強制執行を行うという選択肢があります。
しかし、相手の財産が不明な場合、強制執行の実効性は大きく制限されてしまいます。
こうした状況を打開するために導入されたのが「財産開示手続」です。
この手続きは、裁判所が債務者を指定期日に呼び出し、財産の有無や所在を陳述させるものです。
しかし、実務上は債務者が呼出しを無視するケースや、虚偽の陳述を行うケースも少なくありません。
本稿では、財産開示手続に応じない場合の対処法と、申立てに必要な書類等について解説していきます。
財産開示手続の基本的な仕組み
財産開示手続は、民事執行法第197条以下に規定される制度で、債務者が裁判所に出頭し、自らの財産に関する陳述をすることを義務づけています。
申立てをするには、確定判決や和解調書、公正証書等の債務名義を得ていることが前提となります。
裁判所は債務者を期日に呼び出し、宣誓の上で陳述を行わせ、財産目録を提出させます。
これにより、差押え可能な財産の有無を把握し、強制執行の実効性を高めることが可能となります。
無視された場合の法的措置
財産開示手続において、債務者が裁判所の呼び出しに応じず出頭しない、または陳述を拒む、虚偽の陳述をする、といった行為は法律上の重大な義務違反です。
改正前の民事執行法では、これらに対して「30万円以下の過料」という行政罰にとどまっていました。
しかし、2019年の改正により制裁は大幅に強化され、現在は刑事罰の対象となっています。
具体的には、正当な理由なく開示期日に出頭しない場合や、宣誓を拒否する場合、陳述すべき事項に答えない場合、虚偽の陳述をした場合には、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることがあります(民事執行法213条)。
これは、財産開示手続の実効性を高め、債権者の権利を実質的に保護することを目的としたものです。
ただし、刑事罰の適用には「正当な理由」がなかったかどうかの判断が必要です。
たとえば病気や災害等のやむを得ない事情があれば、処罰の対象とはならない場合があります。
また、裁判所や検察が自動的に処罰手続きを進めるわけではなく、告発や手続上の対応が必要になるケースもあります。
そのため、債権者が実際に法的措置を講じる際には、専門的な知識をもつ弁護士のサポートが重要です。
このように、改正法のもとでは財産開示手続を無視することはリスクが大きく、債務者にとっても軽視できないものとなりました。
債権者側としては、必要に応じて法的措置を適切に進めることで、回収可能性を高めることができます。
裁判所への申立てと必要書類
財産開示手続を申し立てるためには、債務名義を前提として、申立書類一式を裁判所に提出する必要があります。
申立書には、債務者の氏名・住所・債務名義の種類や内容、開示を求める理由等を記載します。
なお、債務名義の正本および送達証明書は必須の添付書類となります。
和解調書や公正証書の場合にも、それぞれ正本の添付が必要です。
申立先は、債務者の住所地を管轄する地方裁判所であり、申立手数料や郵券といった費用の納付も求められます。
必要書類を不備なく揃えることで、スムーズに手続を進めることが可能です。
財産開示手続の実効性と限界
財産開示手続は、債務者に強制的に財産の情報を開示させる画期的な制度ですが、万能ではありません。
債務者が財産を意図的に隠匿したり、名義を他人に移転したりすれば、正確な情報を得られないリスクがあります。
また、債務者が「財産はない」と述べた場合、差押え可能な資産が実際に存在するのかを検証することは容易ではありません。
そのため、財産開示手続だけに依存するのではなく、不動産登記簿謄本や自動車登録事項等証明書、商業登記簿謄本等の公的情報の調査と併用することが望ましいといえます。
なお、弁護士に依頼することで、これらの情報収集を組み合わせた実効的な回収戦略を立てることが可能です。
弁護士に依頼するメリット
財産開示手続の申立てや対応には専門的な知識と経験が必要です。
弁護士に依頼することで、債務名義の確認から申立書の作成、裁判所対応、さらにはその後の強制執行手続まで一貫したサポートを受けることができます。
また、債務者が手続を無視した場合や虚偽の陳述をした場合にも、過料や刑事罰の申立てを含めた適切な対応を速やかに行うことが可能です。
債権回収を成功させるためには、正確かつ迅速な法的対応が不可欠であり、その点で弁護士に依頼する意義は非常に大きいといえます。
まとめ
財産開示手続は、債務者の財産状況を明らかにし、債権回収の可能性を高める重要な制度です。
もっとも、債務者が出頭を拒否したり虚偽の陳述を行ったりすることで、手続が思うように進まないケースもあります。
近年の法改正により制裁は強化されましたが、実際の運用には専門的な判断が欠かせません。
そのため、まずは法律の専門家に相談し、状況に応じた最適な対応方針を確認することが大切です。
少しでも不安がある方は、早めに弁護士にご相談ください。
当事務所はこのほかにも債権回収 弁護士 依頼の案件を多く取り扱っております。
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